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ZEH目標
アーチ開口

左の写真は当事務所で設計監理させて頂きました「香取の家」新築工事の竣工写真ですが、クラシカルなご趣味のお施主様でしたので「半円アーチ」のドアや開口を提案させて頂きました。起源となる西洋建築では、石造りの重い建物に構造上合理的な開口を設けるために、中世ロマネスクの「半円アーチ」やゴシックの「尖塔(せんとう)アーチ」が考案されました。構造的にはロープを垂らした懸垂(けんすい)曲線を上下ひっくり返した「カテナリーアーチ」が最も合理的で、スペインのガウディ建築でも採用されています。
現代の柱と梁の構造ではアーチの構造検討は不要で、単純に形の好き嫌いで選べば良いのですが、インテリアの開口としては半円・円弧・楕円アーチが一般に好まれるようです。冒頭の事例では、小屋裏の斜め天井の下に無理のない形でなるべく高い開口となるように「半円アーチ」としました。アーチ開口は見た目もかわいらしく、存在が際立ってアクセントにもなるので、モダンなインテリアで採用してもよろしいかと思います。
エレガンスと可愛らしさ

日本橋高島屋で開催されていた20世紀のスウェーデンの陶芸家・デザイナー STIG LINDBERG(スティグ・リンドベリ)展へ行きました。展覧会へ行くまで代表作以外は知らなかったのですが、素敵な作品ばかりで驚きました。多くの日本人が共感する北欧デザインの自然な素朴さに加えて、エレガントで可愛らしい魅力があり、スタッフとして働いていたリサ・ラーソンの有名な猫たちの原型も感じられました。
冒頭の左側の写真は流れるような形(LFモデル 1953-54年)とシンプルな絵付け(ペンシル 1954年)が非常に良く合った美しいティーカップ&ソーサ―で、右側の写真はコミカルで可愛らしい置物(スプリングガレ/大きな馬 1958年)です。ろくろ成形と自由な形で用途も異なりますが、並べてみると不思議と同じ作者の作品であると感じられるのではないでしょうか⁇
リノベーションの依頼先は?

ここ数年の工事費の急激な高騰のためか、リノベーションのお問合せを最近多く頂きます。リノベーションは新築戸建てよりも工事費が安く、確認申請も不要な場合がほとんどですが、どちらへ依頼すればよいか迷われるのではないでしょうか?
依頼先としては、工事会社、ワンストップのリノベーション会社、設計事務所に大別されます。例えば、水廻りの設備機器(キッチン・ユニットバス・洗面台・トイレ)の交換や壁クロス・床の張替えなど小規模な改修であれば工事会社さんへ依頼されるのがよろしいかと思います。ワンストップのリノベーション会社さんは、不動産屋さんでの物件手配、借入先の銀行紹介、設計工事を一括で請け負います。改修するマンションの購入から検討されている場合は便利な依頼先ですが、設計工事に関しては効率を重視した対応とする傾向があるようです。すでにお住まいの住居の改修で、デザインにこだわりがあり丁寧に計画したい方や大きな間取りの変更が発生する場合は、設計事務所への依頼をお勧めします。特に一戸建ての大規模改修は、構造・法規の理解が必要ですので、有資格の建築士が対応する設計事務所でないと難しいかもしれません。工事会社は個々の計画に適切な工事会社を設計事務所から紹介させて頂きます。
設計工事費は、設計事務所に依頼すると設計料が発生するので高いと思われがちですが、下請け業者への仲介料が省かれますので、同じ設計工事内容であれば大手一括よりも安価であることが多いです。また、一般とは異なるようなご希望の間取りスケッチ等に基づいて実現案を検討するのも設計事務所の方がより柔軟に対応できます。当事務所の場合は、BIMという3次元CADを使って、打合せの段階で3Dモデルの中を自由に動き回って確認することができるので、竣工後のイメージをより正確に把握できます。家具メーカーが提供する3Dモデルや近似の家具モデルを建物の3Dモデルに入れれば、家具のサイズや色を検討することも可能です。
太陽光発電パネルの無い ZEH
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、高断熱の住宅においてエネルギー効率の良い照明・冷暖房設備を導入した上で、使用したエネルギー以上の電力を主に太陽光発電パネルで作り出す「エネルギーの消費・生産差し引きゼロの住宅」です。
イメージとしては、冒頭添付図のような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻(きりつま)屋根の家」だと思いますが、国の補助金 55万円/戸 (2025年)の支給対象となる住宅で、太陽光発電パネルの設置が不要な「ZEH oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」が存在することはご存知でしょうか?
都市部の狭小地に建設する住宅は、一般に密集地で屋根が小さく十分な太陽光発電が見込めないので、下記の条件を満たせば、太陽光発電パネル無しで「ZEH oriented」としての補助金申請が可能です。
①建設地が北側斜線制限の対象となる用途地域
②敷地面積が85㎡未満
③2階建て以上
④外皮基準が「ZEH強化外皮基準」
⑤基準一次エネルギー消費量から20%以上の
一次エネルギー消費量削減
(再生可能エネルギーを除く)
⑥登録ZEHビルダー又はプランナーが関与
これまでは、④を満たす断熱材、⑤を満たす冷暖房機器の仕様を大幅に上げなければいけなかったので、補助金を大きく超える追加工事費が必要でしたが、法律の改正で、令和7年4月以降に着工するすべての住宅に従来より高い省エネ性能(住宅表示制度の断熱等性能等級4及び一次エネルギー消費量等級4以上)が求められるようになりましたので、ZEH補助金の支給を受けた上で、少し工事費を増額すれば「ZEH oriented」で求められている④⑤の条件も満たすことが難しくない状況になりました。より高断熱化・省エネ化することでの光熱費の削減を考慮すれば、高い初期投資ではないかもしれません。
⑥については、当事務所はZEHプランナー登録をしておりますので、補助金申請が可能です。都市部の狭小地で、環境や省エネに関心をお持ちでもハウスメーカーの分譲住宅にあるような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻屋根の家」ではない注文住宅をご希望の場合は、是非お声掛けください!
マンションリノベーション_LDK

当事務所HPに掲載させて頂いております「布田のマンション改修工事」について、改修前後を比較して、玄関・寝室・LDKの順に3回に渡って説明させて頂いておりますが、今回は最終回で「LDK」についてとなります。
築40年程のマンションをすでに不動産業者さんが一通り改修して販売された物件の再改修でしたので、改修前の壁・床・天井の仕上や室内建具、キッチン・照明器具・エアコン等の設備器具は、すべて新品でした。一見、改修の必要が無いようにも思われましたが、LDKについては下記が気になりました。
1)天井高さが2m20cmとリビングとしては非常に低い。
2)LDKが合計で15畳の広さしかない。
3)建設時は部屋の奥の壁に沿って設置されていたと思われるキッチンを部屋の中央方向へ移動して対面型としたためか、キッチンの前に廊下からの出入口があり、現状のLDK広さでは食卓の配置が難しい。
上記はいずれもマンションの改修ではよく見受けられる問題です。今回は元々4LDKでしたが3LDKでも問題無いとのお話でしたので、寝室を一つつぶしてリビングを広げ、天井仕上を無くして十分な天井高を確保する提案をさせて頂きました。

元々設置されていた新品のキッチンは、そのままご使用可能ということで、キッチン廻りにオープン棚を追加して、キッチンの位置を少しずらすことにより背後にパントリー収納も設置しました。また、キッチンから洗面所へ直接行くことが出来るように、家事動線も見直しています。
新築住宅の設計は、敷地の特性とお施主様のご要望を読み解きながら提案させて頂きますが、マンションリノベーションの設計は、改修前の状態をよく観察して、お施主様のご要望を実現する方法を模索する作業となります。

