バルコニーは屋上?

「西宮の家」の設計 ⑭

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第14回です。

 都心居住では狭小敷地に住宅を建てることが多く、家のまわりの採光や眺望は期待出来ないので、上方からの自然光や高い位置にあるバルコニーをうまく計画することが重要です。一般には「屋上バルコニー」のご要望が多いですが、屋上バルコニーの床は通常の屋根よりもコストがかかり、3階から屋上へのぼる階段も余分に必要です。また、屋上の手すり壁の立ち上りは高さ制限の対象になります。

 「西宮の家」は高さ制限の厳しい角地であったため、屋上ではなく2・3階のバルコニーを組み合わせてバルコニーの屋外空間を計画しました。冒頭写真上の3階バルコニーは主寝室の前にあり、はす向かいの公園の木々を眺められます。一方、リビングダイニング前にある三角形の小さな2階バルコニーは、3階バルコニーと吹抜けを通じて視覚的につながっているので、実際の大きさよりも広がりが感じられます。大きな屋上バルコニーよりも小さなバルコニーのつながりの方が豊かな屋外空間になるかもしれません。

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門扉は不要?

「西宮の家」の設計 ⑬

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第13回です。

 2023年は卯年ですが、「卯」の字は門扉が開いた形とされ、天門が開いて万物が繁茂することから五穀豊穣、家内安全を意味する縁起の良い文字だそうです。最近の住宅はコストダウンのためか、門扉や塀を簡略化したり省略することも多いようですが、門扉や塀を設ける理由としては以下が挙げられます。

1)防犯・防護
2)敷地境界を明確にする
3)建物と一体の外観デザイン

 敷地いっぱいに建物を建てた場合は建物まわりに土地がほとんど残らないので、門扉や塀をつくらない選択肢もありますが、冒頭写真の「西宮の家」では角地で車が追突する危険があることや、三角敷地の突端に塀で囲った小庭を計画すること、建物と塀を一体として大きく見せることなどが理由で門扉と塀を計画しました。門扉は玄関ドアと一緒に建物のエントランスを演出するので、既製品の門扉ではなく特注のアルミ門扉を塀上のアルミルーバーと共に製作しました。通常の門扉は玄関ドアへ至る前にありますが、「西宮の家」の玄関ドアは道路に直接面しているので、この門扉は通用門として機能しています。

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