エレガンスと可愛らしさ

 日本橋高島屋で開催されていた20世紀のスウェーデンの陶芸家・デザイナー STIG LINDBERG(スティグ・リンドベリ)展へ行きました。展覧会へ行くまで代表作以外は知らなかったのですが、素敵な作品ばかりで驚きました。多くの日本人が共感する北欧デザインの自然な素朴さに加えて、エレガントで可愛らしい魅力があり、スタッフとして働いていたリサ・ラーソンの有名な猫たちの原型も感じられました。

 冒頭の左側の写真は流れるような形(LFモデル 1953-54年)とシンプルな絵付け(ペンシル 1954年)が非常に良く合った美しいティーカップ&ソーサ―で、右側の写真はコミカルで可愛らしい置物(スプリングガレ/大きな馬 1958年)です。ろくろ成形と自由な形で用途も異なりますが、並べてみると不思議と同じ作者の作品であると感じられるのではないでしょうか⁇

リノベーションの依頼先は?

 ここ数年の工事費の急激な高騰のためか、リノベーションのお問合せを最近多く頂きます。リノベーションは新築戸建てよりも工事費が安く、確認申請も不要な場合がほとんどですが、どちらへ依頼すればよいか迷われるのではないでしょうか?
   
 依頼先としては、工事会社、ワンストップのリノベーション会社、設計事務所に大別されます。例えば、水廻りの設備機器(キッチン・ユニットバス・洗面台・トイレ)の交換や壁クロス・床の張替えなど小規模な改修であれば工事会社さんへ依頼されるのがよろしいかと思います。ワンストップのリノベーション会社さんは、不動産屋さんでの物件手配、借入先の銀行紹介、設計工事を一括で請け負います。改修するマンションの購入から検討されている場合は便利な依頼先ですが、設計工事に関しては効率を重視した対応とする傾向があるようです。すでにお住まいの住居の改修で、デザインにこだわりがあり丁寧に計画したい方や大きな間取りの変更が発生する場合は、設計事務所への依頼をお勧めします。特に一戸建ての大規模改修は、構造・法規の理解が必要ですので、有資格の建築士が対応する設計事務所でないと難しいかもしれません。工事会社は個々の計画に適切な工事会社を設計事務所から紹介させて頂きます。

 設計工事費は、設計事務所に依頼すると設計料が発生するので高いと思われがちですが、下請け業者への仲介料が省かれますので、同じ設計工事内容であれば大手一括よりも安価であることが多いです。また、一般とは異なるようなご希望の間取りスケッチ等に基づいて実現案を検討するのも設計事務所の方がより柔軟に対応できます。当事務所の場合は、BIMという3次元CADを使って、打合せの段階で3Dモデルの中を自由に動き回って確認することができるので、竣工後のイメージをより正確に把握できます。家具メーカーが提供する3Dモデルや近似の家具モデルを建物の3Dモデルに入れれば、家具のサイズや色を検討することも可能です。

布田のマンション改修工事
BLOG: 家具3Dデータ

太陽光発電パネルの無い ZEH

出典:2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について(赤字は当事務所追記)

 ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、高断熱の住宅においてエネルギー効率の良い照明・冷暖房設備を導入した上で、使用したエネルギー以上の電力を主に太陽光発電パネルで作り出す「エネルギーの消費・生産差し引きゼロの住宅」です。

 イメージとしては、冒頭添付図のような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻(きりつま)屋根の家」だと思いますが、国の補助金 55万円/戸 (2025年)の支給対象となる住宅で、太陽光発電パネルの設置が不要な「ZEH oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」が存在することはご存知でしょうか?

 都市部の狭小地に建設する住宅は、一般に密集地で屋根が小さく十分な太陽光発電が見込めないので、下記の条件を満たせば、太陽光発電パネル無しで「ZEH oriented」としての補助金申請が可能です。

①建設地が北側斜線制限の対象となる用途地域
②敷地面積が85㎡未満
③2階建て以上
④外皮基準が「ZEH強化外皮基準」
⑤基準一次エネルギー消費量から20%以上の
 一次エネルギー消費量削減
 (再生可能エネルギーを除く)
⑥登録ZEHビルダー又はプランナーが関与

 これまでは、④を満たす断熱材、⑤を満たす冷暖房機器の仕様を大幅に上げなければいけなかったので、補助金を大きく超える追加工事費が必要でしたが、法律の改正で、令和7年4月以降に着工するすべての住宅に従来より高い省エネ性能(住宅表示制度の断熱等性能等級4及び一次エネルギー消費量等級4以上)が求められるようになりましたので、ZEH補助金の支給を受けた上で、少し工事費を増額すれば「ZEH oriented」で求められている④⑤の条件も満たすことが難しくない状況になりました。より高断熱化・省エネ化することでの光熱費の削減を考慮すれば、高い初期投資ではないかもしれません。

 ⑥については、当事務所はZEHプランナー登録をしておりますので、補助金申請が可能です。都市部の狭小地で、環境や省エネに関心をお持ちでもハウスメーカーの分譲住宅にあるような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻屋根の家」ではない注文住宅をご希望の場合は、是非お声掛けください!

マンションリノベーション_LDK

 当事務所HPに掲載させて頂いております「布田のマンション改修工事」について、改修前後を比較して、玄関・寝室・LDKの順に3回に渡って説明させて頂いておりますが、今回は最終回で「LDK」についてとなります。

 築40年程のマンションをすでに不動産業者さんが一通り改修して販売された物件の再改修でしたので、改修前の壁・床・天井の仕上や室内建具、キッチン・照明器具・エアコン等の設備器具は、すべて新品でした。一見、改修の必要が無いようにも思われましたが、LDKについては下記が気になりました。

1)天井高さが2m20cmとリビングとしては非常に低い。

2)LDKが合計で15畳の広さしかない。

3)建設時は部屋の奥の壁に沿って設置されていたと思われるキッチンを部屋の中央方向へ移動して対面型としたためか、キッチンの前に廊下からの出入口があり、現状のLDK広さでは食卓の配置が難しい。

 上記はいずれもマンションの改修ではよく見受けられる問題です。今回は元々4LDKでしたが3LDKでも問題無いとのお話でしたので、寝室を一つつぶしてリビングを広げ、天井仕上を無くして十分な天井高を確保する提案をさせて頂きました。

 元々設置されていた新品のキッチンは、そのままご使用可能ということで、キッチン廻りにオープン棚を追加して、キッチンの位置を少しずらすことにより背後にパントリー収納も設置しました。また、キッチンから洗面所へ直接行くことが出来るように、家事動線も見直しています。

 新築住宅の設計は、敷地の特性とお施主様のご要望を読み解きながら提案させて頂きますが、マンションリノベーションの設計は、改修前の状態をよく観察して、お施主様のご要望を実現する方法を模索する作業となります。

▶布田のマンション改修工事

マンションリノベーション_寝室

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 当事務所HPに掲載させて頂いております「布田のマンション改修工事」について、改修前後を比較して、玄関・寝室・LDKの順に3回に渡って説明させて頂いておりますが、今回は2回目の「寝室」についてとなります。

 築40年程のマンションをすでに不動産業者さんが一通り改修して販売された物件の再改修でしたので、改修前の寝室の壁・床・天井の仕上や照明器具・エアコンもすべて新品でしたが、天井高さが2m20cmと低く、またグラフィックデザイナーの奥様がSOHOとして使用できる部屋が欲しいとのご要望がありました。

 玄関の隣の寝室は、玄関土間と地続きの下足で使用出来るSOHOとして、天井の仕上を取り払うことにより、天井高さ2m60cmのオフィス空間へと改修しました。玄関土間からSOHOへの入口には、奥様がデザインした真鍮仕上の表札も掲げています。

 LDKの隣の主寝室の天井仕上も同様に取り払って、高くなった天井の近くに室内窓を設けることにより、プライバシーを確保しながら広く感じられる部屋となりました。

 白い壁・床・天井に囲まれた画一的な寝室が、それぞれの使い方に応じた個性的な部屋に改修出来たかと思います。

▶布田のマンション改修工事

マンションリノベーション_玄関

 当事務所HPに掲載させて頂いております「布田のマンション改修工事」について、改修前の写真もあった方がわかりやすいのではとお施主様からご親切なアドバイスを頂きました。

 築40年弱のマンションをすでに不動産業者さんが一通り改修して販売された物件の再改修のご依頼でしたので、改修前も新品同様ですが、お施主様仕様にカスタマイズされる様子がお分かり頂けるかと思います。

 玄関・寝室・LDKの順に3回に分けてのご紹介となりまして、第1回は玄関です。

 玄関はマンションの場合、特に築年数が多いマンションでは小さくて収納が少ない傾向にあります。改修前の状態では、90cm四方程の土間に奥行35cm程の靴箱があるだけでしたが、廊下を一部つぶして周辺の部屋の壁位置を調整し、靴箱を廊下側面へ移動することによって、玄関土間を約1.5m四方に広げ、さらに登山がご趣味の旦那様のためのアウトドア収納を玄関土間脇に設置することが出来ました。

 また、廊下床のフローリングは無垢材として、廊下突き当りのドアはカントリー調の輸入ドアへ変更の上、特注色で塗装しています。改修前は新品であっても真っ白で無味乾燥な印象でしたが、改修後は質感のある暖かい個性的な玄関になったのではと思います。

▶ 布田のマンション改修工事

透ける階段

 階段の大きさは建築基準法で最低寸法が決められているので、施主のご希望で「もっと小さくしたい」・「ハシゴで良い」というわけにはいきません。特に狭小敷地では、3階建て以上の計画が多く、各階で階段の占める面積の割合は意外に大きいものです。

 部屋を広く見せるためには、階段と隣りの部屋を視覚的・空間的に連続させて、「透ける階段」とすることが効果的です。例えば、当事務所設計の「西宮の家(三角狭小敷地の家)」では、鉄骨階段を大型ガラスで仕切って、隣りのダイニングと視覚的に連続させています。また、「佃の家」ではRC(鉄筋コンクリート)階段を木製の縦格子(たてごうし)で仕切って、視覚的・空間的にリビングダイニングと連続させています。

 空調計画の観点からは、「西宮の家(三角狭小敷地の家)」の場合、階段とダイニングをガラスと扉で仕切っているので、ダイニングの冷暖気が階段へ逃げることはありません。一方、「佃の家」ではリビングダイニングの冷暖気が階段へ流れるので、個室以外の全館空調のようになりますが、非常にコンパクトな家であることを前提に、リビングダイニングのエアコン能力に余裕を持たせて、階段室上部に暖気を逃がす通気窓を設けることでの対応としています。

▶西宮の家(三角狭小敷地の家)

▶佃の家

ZEH/トライブリッド

画像引用:ニチコン株式会社

 猛暑や大雨などの世界規模での異常気象を考えると、CO2等の温室効果ガスの削減は急務です。日本のようにエネルギー自給率が低い国では、特に「省エネルギー」が求められます。

 建物の設計をする際に「省エネルギー」とするためには、日本古来の建物に見られるような「庇や通気・日照」を考慮した、いわゆる「パッシブ・デザイン」とすることを心掛けていますが、近年の猛暑は「パッシブ・デザイン」だけでは対応できない厳しさとなっています。

パッシブ・デザインの事例
BLOG:光と風
BLOG:採光シミュレーション

 従来の「パッシブ・デザイン」に加えて、屋根・壁・窓の断熱性能を高めた上で、太陽光発電での「創エネルギー」も加えた「ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とすることが望ましいですが、補助金を差し引いても建設費が大きく上昇するために、当事務所では残念ながら見送られることが多いのが実情です。

 「創エネルギー」については、電気自動車の普及を背景に、冒頭図のように太陽光発電・蓄電池・電気自動車を一括で制御するシステム:トライブリッドが理想だと思います。太陽光発電から車への充電、車から家庭の電力/蓄電池への最適な電力供給(V2H/V2L)も可能なので、今後はトライブリッドが一般化するのではないでしょうか?

 現状では、ZEHやトライブリッドは、デザインよりも性能重視のお施主様がハウスメーカーや工務店で建てられることが多いですが、一般化すれば設計事務所でも提案・実現させて頂く機会が増えるのではと期待しております。

 特に、ZEH補助金は、登録工事会社・設計事務所しか申請出来ませんが、当事務所は登録設計事務所(ZEHプランナー)ですので、ZEHをご検討されている場合は是非お声掛け下さい。

 また、ZEHやトライブリッドでなくても、新築時は太陽光発電と最低限の蓄電池のみとして、後から蓄電池を増設したり、車への充電器(V2Hスタンド)を追加する計画も可能ですので、お気軽にご相談頂ければと思います。

屋根断熱

木造住宅 小屋裏2階(建設中)

 地球温暖化のためか、日本の夏はますます暑くなっているようです。最近は室内でも熱中症になることが珍しくありません。夏場は工事も大変で、工事現場へ行くと、大工さんはじめ職人さんが汗だくで頑張って仕事をされています。

 添付の写真は、当事務所で設計させて頂いて建設中の住宅の屋根ですが、フラット35を申請されたため、2025年に義務化される省エネ基準を先取りして、従来よりも性能の高い断熱材が使用されました。熱抵抗値(熱の伝わりにくさ)で比べると、従来の2倍くらい断熱性能が良くなっているので、夏の炎天下の現場でも暑さの違いがはっきりとわかります!

 もちろん断熱材の値段も大きく違いますが、屋根と窓の断熱はとりわけ重要なので、投資価値があるのではないでしょうか??

ライトウェル Light Well

左写真:階段室3階 右写真:2階ダイニングから見る階段室

 ここ数年は施設設計に携わることが多かったのですが、最近は戸建て住宅の設計のご相談が多く、外資系トップライトメーカーで長年日本でも住宅向けトップライトを販売されている日本ベルックスさんが当事務所に来られました。「西宮の家」の設計については、前回ブログまでで一通りお話させて頂いたつもりでしたが、ベルックスさんのトップライトを階段室に設置していましたので、追加で取り上げさせて頂きます。

 都心部では一般に採光が難しく、トップライトは狭小地でも採光を確保する有効な手段です。トップライトは和製英語で、英語ではスカイライト(Skylight)ですが、トップライトを通してSky(空)を見る設置の方法と、Sky(空)は見えなくてもLight(光)を感じる方法に大別できると思います。Light(光)だけを感じる方がよりドラマチックな空間となることが多く、いわゆる「ライトウェル(Light Well 光の井戸)」が演出できます。

 冒頭写真のように、「西宮の家」では階段室3階屋根のトップライトから降り注ぐ光が2階ダイニングの大型ガラス越しに見えて、階段室がライトウェル(光の井戸)となる計画です。大きなトップライトから青いSky(空)を眺めるのも気持ちいいですが、光がどのように見えるかも考えて設計したいと思っています。

→「西宮の家」竣工写真