一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ

一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ

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設計事務所

ライトウェル Light Well

左写真:階段室3階 右写真:2階ダイニングから見る階段室

 ここ数年は施設設計に携わることが多かったのですが、最近は戸建て住宅の設計のご相談が多く、外資系トップライトメーカーで長年日本でも住宅向けトップライトを販売されている日本ベルックスさんが当事務所に来られました。「西宮の家」の設計については、前回ブログまでで一通りお話させて頂いたつもりでしたが、ベルックスさんのトップライトを階段室に設置していましたので、追加で取り上げさせて頂きます。

 都心部では一般に採光が難しく、トップライトは狭小地でも採光を確保する有効な手段です。トップライトは和製英語で、英語ではスカイライト(Skylight)ですが、トップライトを通してSky(空)を見る設置の方法と、Sky(空)は見えなくてもLight(光)を感じる方法に大別できると思います。Light(光)だけを感じる方がよりドラマチックな空間となることが多く、いわゆる「ライトウェル(Light Well 光の井戸)」が演出できます。

 冒頭写真のように、「西宮の家」では階段室3階屋根のトップライトから降り注ぐ光が2階ダイニングの大型ガラス越しに見えて、階段室がライトウェル(光の井戸)となる計画です。大きなトップライトから青いSky(空)を眺めるのも気持ちいいですが、光がどのように見えるかも考えて設計したいと思っています。

→「西宮の家」竣工写真

昼顔 VS 夜顔

 

 「西宮の家」の設計 ⑮

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第15回です。

 建物の外観を検討する場合、基本的には昼間に建物がどのような見え方をするのかを検討します。住宅の場合は、公共建築のようにライトアップされたり、夜の利用が多い商業施設のように日が暮れてから見られることは少ないので、夜の建物姿の優先度は一般に低く、むしろ夜の窓を通して見える室内のプライバシーをどのように守るかの方が重視されることが多いです。特に狭小地では建物が敷地いっぱいに建っているため窓が道路に近く、1階の窓のカーテンは一日中閉めていることも多いのではないでしょうか?

 「西宮の家」の設計でも夜の建物の見え方についての打合せは特にありませんでしたが、2階の坪庭外側をまわる白い壁にあけられた大きな四角い穴は、夜の通りから見上げると、ぼんやり光が浮かんで行燈(あんどん)のように見えるかもねという話はしました。

 冒頭の写真は同じ位置から撮影した「西宮の家」の昼と夜の表情ですが、昼間に暗く後退して見える窓や開口は、昼になると明るく前へ出てくるので印象が異なります。実際に、道路に近い窓はカーテンやブラインドが下げられて、白い壁にあけられた大きな四角い穴は異質なものに見えるのかもしれません。

 格子の表構えが連なる古都の通りは、格子から漏れる柔らかい光が夜の通りを照らして美しく感じられることがあります。都心部では街灯に照らされて夜も明るい通りが多いですが、住宅でも夜の見え方について設計段階で検討した方が良いのかもしれません。

→ 西宮の家

キッチンはオーダーメード?

「西宮の家」の設計 ⑨

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第9回です。

 住宅の設計でお施主様から「キッチンメーカーはどこがいいですか?」という質問をよく受けます。ハウスメーカーで設計をしていた時は、自社と提携開発しているメーカーをお勧めすることもありましたが、設計事務所では公平なアドバイスを差し上げられるので、お施主様のご要望を伺って一緒に検討させて頂きます。

 システムキッチンが日本で生まれたのは、1970年代の高度成長期後半、ちょうどマンションがたくさん建ち始めた頃です。今ではたくさんの国内メーカーがありますが、ステンレス加工が得意なメーカーや家具製作が上手なメーカー、自社開発の素材を使用するメーカー、便器や家電の大手で総合的によくまとまっているメーカーなど各メーカーそれぞれ特徴があります。

 1930年代からの歴史をもつ欧米のメーカーも日本に多く進出していて、主流はドイツメーカーです。つい最近まですべて輸入代理店の取り扱いでしたが、日本法人を設立しているメーカーも見受けられます。ドイツメーカーのシステムキッチンはデザインも価格も上級で、ちょうど日本車とドイツ車のような関係です。高額の案件やキッチンにご予算をかけられる場合は主要な選択肢となります。

 メーカーの選択方法としては、ショールームへ行って販売員の説明を伺って、実際に展示品を使ってみることをお勧めします。設計者としては、お施主様のご希望やご予算を伺って、建物との調和を見ながら、メーカーの絞り込みや決定のお手伝いをさせて頂きます。

 また、上記メーカーを採用しないで、設計事務所で詳細図を描いてキッチンを家具工事としてオーダーメード(特注製作)する方法もあります。冒頭写真の「西宮の家」のキッチンは、三角形の敷地端部にある台形平面の台所であったため、家具工事として特注製作しました。水栓金具やシンク、オーブン、レンジ、ワークトップの材質や吊戸棚の塗装色などお施主様のご要望に応じて一つ一つの部材や色を選んで、BIM(3D CAD)で組みあがった姿を様々な角度から検証しながら決定しました。

 オーダーメードのキッチンとすると、設計者の手間はかかりますが、総費用としてはメーカーの高価格帯キッチンよりは安く仕上がります。さらに「調理設備以外はただの箱で良い」という割り切りがあれば、低価格のキッチンとすることも可能です。お施主様のご要望や建物の条件に合わせて自由に設計できるのが家具工事でのオーダーメードキッチンのメリットですが、メーカーキッチンのようなシンクや収納の細やかな提案やメンテナンス保証が無いのがデメリットとなります。キッチンをオーダーメードとされるかはケースバイケースではないでしょうか?

→ 西宮の家

設計事務所には保証がない?…設計事務所の保証のあり方

 大手住宅会社の方が「設計事務所とは異なり、当社ではメーカー保証があります」というお話をされることがあります。では、設計事務所には保証がないのでしょうか?

 実際には、中小設計事務所でも損害保険会社と保険契約を結んで、設計に起因する事故の賠償に備えていることが多いです。当事務所も東京建築士会を通じて、東京海上日動火災保険会社の「建築士賠償責任補償制度(通称けんばい)」に加入しています。例えば、完成引渡し後に外壁のパネルが歪み、剥離や漏水事故が発生するという事故のやり直し工事費用について保険金が支給されます。

 また、工事会社側でも「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称品確法)」による主要構造部や雨漏りの瑕疵(かし)についての10年保証が最低限あるはずで、定期的な点検とメンテナンスを請け負うのは大手住宅会社と同様です。さらに当事務所の場合は、完成引渡し後のこれら工事会社との保証やメンテナンスでのトラブルについて、設計者の立場から立会い・調整・検証に参加させて頂くことも可能です。

 私個人としては、これまで勤務した会社も通じて、賠償に発展した問題を抱えたことはありません。どうぞ安心してご依頼頂ければと思います。

弁護士なしで裁判をしますか?…工務店ではなく設計事務所に依頼する3つのメリット

 家を建てられる時に、「(当事務所のような)設計事務所に依頼するのと工務店に依頼するのとどう違うのですか?」と聞かれることがあります。設計事務所も工務店も様々で、一概に回答は出来ませんが、工務店は原則「工事会社」なので、設計を工事と一緒に請け負う場合でも、利益は設計よりもむしろ工事から多く計上されます。必然的に設計に時間をかけることは難しく、こだわりのあるお施主様や変形敷地などの設計に手間がかかる場合は、工務店よりも設計事務所にご依頼頂くことをおすすめします。

 また、設計打合せや工事の際には、素人ではわからないような専門的な話に多く出くわします。工務店に設計と工事を依頼した場合は、お施主様が単独で工務店と直接話し合うことになりますが、設計事務所はお施主様の代わりに工事会社と話し合い、問題を解決することが出来ます。裁判に例えれば、設計事務所は弁護士のような役割で、冒頭タイトルの「弁護士なしで裁判をしますか?」という例え話をよく差し上げます。

 建設費用については、設計事務所に依頼すると設計料(当事務所では建設費の10~15%)がかかりますので、工務店に設計と施工を依頼した方が安いと思われるかもしれません。但し、工務店の見積り額が最終の仕上がりに見合った妥当な金額であるかは、素人では判断が難しいのではないでしょうか?設計事務所は見積書に記載している数量や単価を確認して、場合によっては複数の工事会社に相見積りもして、専門的な知見から見積り額を査定します。また、工事が見積りの設計図通りとなっているかを監視する工事監理の法規義務(建築士法)もあります。これら設計以外の仕事も一般にすべて設計料に含まれます。

 まとめると、工務店ではなく設計事務所に依頼するメリットとしては以下の3つが挙げられます。

1.こだわりのお施主様や変形敷地でも対応可能な「設計・提案力」

2.工事会社に直面することなく仲介できる「調整力」

3.見積額の査定や設計図通りの工事を確認できる「監視力」

 設計事務所へ依頼するのは敷居が高いと思われるかもしれませんが、どうぞお気軽にご連絡ください!