「小屋裏」のある家

小屋裏3階建て:2階建ての大きさで3階建て

 都市の狭小敷地で前面道路からの「道路斜線制限」と北側からの「北側斜線制限」のために2階建て以上の建物の大きさがとれない場合は、2階屋根の「小屋裏(こやうら)」を3階として3階建てとすることが出来る場合があります。「小屋裏」は建築の専門用語で、一般的な表現の「屋根裏」とほぼ同じ意味です。

 海外の住宅は急勾配の屋根が多いので映画やドラマでも屋根裏部屋が多く見られますが、日本で小屋裏の部屋を寝室として使用する場合は規定の採光・換気・排煙が法規で求められますので、屋根窓(ドーマー)や天窓(トップライト)が必要です。また、小屋裏は狭い空間となりがちなので、階段室などの吹抜をうまく視覚的につなげて広く感じられる工夫もあると良いと思います。

 当事務所で設計監理をさせて頂いた「南青山の家」は西側の接道長さが短い台形の敷地で、高度地区の北側は天空率が適用外の北側斜線、西側は道路斜線と台形斜辺(隣地境界)からの北側斜線の両方がかかるために建物のボリュームが確保しにくい状況でしたが、小屋裏3階とすることにより3階建ての住宅が実現できました。

「南青山の家」竣工写真
「南青山の家」打合せCG

 当事務所で設計監理させて頂いた小屋裏の他の事例としては「香取の家」が小屋裏2階となります。この場合に小屋裏としたのは法規対応でなく、お施主様がイメージされた急勾配屋根の海外住宅外観に近づけるためでしたが、結果として魅力的な2階の小屋裏空間になったと思います。

「香取の家」竣工写真
「香取の家」打合せCG

太陽光発電パネルの無い ZEH

出典:2025年の経済産業省と環境省のZEH補助金について(赤字は当事務所追記)

 ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、高断熱の住宅においてエネルギー効率の良い照明・冷暖房設備を導入した上で、使用したエネルギー以上の電力を主に太陽光発電パネルで作り出す「エネルギーの消費・生産差し引きゼロの住宅」です。

 イメージとしては、冒頭添付図のような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻(きりつま)屋根の家」だと思いますが、国の補助金 55万円/戸 (2025年)の支給対象となる住宅で、太陽光発電パネルの設置が不要な「ZEH oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」が存在することはご存知でしょうか?

 都市部の狭小地に建設する住宅は、一般に密集地で屋根が小さく十分な太陽光発電が見込めないので、下記の条件を満たせば、太陽光発電パネル無しで「ZEH oriented」としての補助金申請が可能です。

①建設地が北側斜線制限の対象となる用途地域
②敷地面積が85㎡未満
③2階建て以上
④外皮基準が「ZEH強化外皮基準」
⑤基準一次エネルギー消費量から20%以上の
 一次エネルギー消費量削減
 (再生可能エネルギーを除く)
⑥登録ZEHビルダー又はプランナーが関与

 これまでは、④を満たす断熱材、⑤を満たす冷暖房機器の仕様を大幅に上げなければいけなかったので、補助金を大きく超える追加工事費が必要でしたが、法律の改正で、令和7年4月以降に着工するすべての住宅に従来より高い省エネ性能(住宅表示制度の断熱等性能等級4及び一次エネルギー消費量等級4以上)が求められるようになりましたので、ZEH補助金の支給を受けた上で、少し工事費を増額すれば「ZEH oriented」で求められている④⑤の条件も満たすことが難しくない状況になりました。より高断熱化・省エネ化することでの光熱費の削減を考慮すれば、高い初期投資ではないかもしれません。

 ⑥については、当事務所はZEHプランナー登録をしておりますので、補助金申請が可能です。都市部の狭小地で、環境や省エネに関心をお持ちでもハウスメーカーの分譲住宅にあるような「大きな太陽光発電パネルが乗った切妻屋根の家」ではない注文住宅をご希望の場合は、是非お声掛けください!

透ける階段

 階段の大きさは建築基準法で最低寸法が決められているので、施主のご希望で「もっと小さくしたい」・「ハシゴで良い」というわけにはいきません。特に狭小敷地では、3階建て以上の計画が多く、各階で階段の占める面積の割合は意外に大きいものです。

 部屋を広く見せるためには、階段と隣りの部屋を視覚的・空間的に連続させて、「透ける階段」とすることが効果的です。例えば、当事務所設計の「西宮の家(三角狭小敷地の家)」では、鉄骨階段を大型ガラスで仕切って、隣りのダイニングと視覚的に連続させています。また、「佃の家」ではRC(鉄筋コンクリート)階段を木製の縦格子(たてごうし)で仕切って、視覚的・空間的にリビングダイニングと連続させています。

 空調計画の観点からは、「西宮の家(三角狭小敷地の家)」の場合、階段とダイニングをガラスと扉で仕切っているので、ダイニングの冷暖気が階段へ逃げることはありません。一方、「佃の家」ではリビングダイニングの冷暖気が階段へ流れるので、個室以外の全館空調のようになりますが、非常にコンパクトな家であることを前提に、リビングダイニングのエアコン能力に余裕を持たせて、階段室上部に暖気を逃がす通気窓を設けることでの対応としています。

▶西宮の家(三角狭小敷地の家)

▶佃の家

ライトウェル Light Well

左写真:階段室3階 右写真:2階ダイニングから見る階段室

 ここ数年は施設設計に携わることが多かったのですが、最近は戸建て住宅の設計のご相談が多く、外資系トップライトメーカーで長年日本でも住宅向けトップライトを販売されている日本ベルックスさんが当事務所に来られました。「西宮の家」の設計については、前回ブログまでで一通りお話させて頂いたつもりでしたが、ベルックスさんのトップライトを階段室に設置していましたので、追加で取り上げさせて頂きます。

 都心部では一般に採光が難しく、トップライトは狭小地でも採光を確保する有効な手段です。トップライトは和製英語で、英語ではスカイライト(Skylight)ですが、トップライトを通してSky(空)を見る設置の方法と、Sky(空)は見えなくてもLight(光)を感じる方法に大別できると思います。Light(光)だけを感じる方がよりドラマチックな空間となることが多く、いわゆる「ライトウェル(Light Well 光の井戸)」が演出できます。

 冒頭写真のように、「西宮の家」では階段室3階屋根のトップライトから降り注ぐ光が2階ダイニングの大型ガラス越しに見えて、階段室がライトウェル(光の井戸)となる計画です。大きなトップライトから青いSky(空)を眺めるのも気持ちいいですが、光がどのように見えるかも考えて設計したいと思っています。

→「西宮の家」竣工写真

「西宮の家」の設計

建設中の「西宮の家」

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。三角形の狭小敷地に設計させて頂いた3階建て住宅「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかを昨年からブログで15回に渡って書かせて頂きました。

第1回:2階建しか建てられない?…天空率で3階建が可能に
第2回:周囲と呼応する開口
第3回:コンクリート造ですか?…いえ、木造です
第4回:玄関…室内の第一印象
第5回:多目的な予備室
第6回:サニタリーの設計
第7回:オーダーメードバスとする6つの理由
第8回:階段は木製?鉄製?オープン?
第9回:キッチンはオーダーメード?
第10回:窓のメリット・デメリット
第11回:ビルトイン本棚
第12回:採光シミュレーション
第13回:門扉は不要?
第14回:バルコニーは屋上?
第15回:昼顔VS夜顔

 書き始めた時には15回にもなるとは思っていませんでしたが、書いていくうちにあれもこれも検討して協議させて頂いたと当時の記憶がよみがえりまして、想定よりも多い回数となりました。

 設計事務所で設計する場合は、メーカー商品の基本プランや規格のようなものが無く、まったく自由に設計できるので選択肢が多くあります。また、BIM(3次元CAD)で室内外の様子をウォークスルーで見ると、おそらくこれまで2次元の図面だけでは建てるまでわからなかったことも設計段階で明らかになるために検討対象となることがあります。

 私自身は20年以上設計業務に従事して、国内外で様々な経験をしておりますので、出来るだけ多くの可能性を示しながら、お施主様のご希望と建てられる敷地に合ったかたちを一緒に追求したいと思っております。

→「西宮の家」設計打合せでのBIM画像
→「西宮の家」竣工写真

昼顔 VS 夜顔

 

 「西宮の家」の設計 ⑮

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第15回です。

 建物の外観を検討する場合、基本的には昼間に建物がどのような見え方をするのかを検討します。住宅の場合は、公共建築のようにライトアップされたり、夜の利用が多い商業施設のように日が暮れてから見られることは少ないので、夜の建物姿の優先度は一般に低く、むしろ夜の窓を通して見える室内のプライバシーをどのように守るかの方が重視されることが多いです。特に狭小地では建物が敷地いっぱいに建っているため窓が道路に近く、1階の窓のカーテンは一日中閉めていることも多いのではないでしょうか?

 「西宮の家」の設計でも夜の建物の見え方についての打合せは特にありませんでしたが、2階の坪庭外側をまわる白い壁にあけられた大きな四角い穴は、夜の通りから見上げると、ぼんやり光が浮かんで行燈(あんどん)のように見えるかもねという話はしました。

 冒頭の写真は同じ位置から撮影した「西宮の家」の昼と夜の表情ですが、昼間に暗く後退して見える窓や開口は、昼になると明るく前へ出てくるので印象が異なります。実際に、道路に近い窓はカーテンやブラインドが下げられて、白い壁にあけられた大きな四角い穴は異質なものに見えるのかもしれません。

 格子の表構えが連なる古都の通りは、格子から漏れる柔らかい光が夜の通りを照らして美しく感じられることがあります。都心部では街灯に照らされて夜も明るい通りが多いですが、住宅でも夜の見え方について設計段階で検討した方が良いのかもしれません。

→ 西宮の家

バルコニーは屋上?

「西宮の家」の設計 ⑭

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第14回です。

 都心居住では狭小敷地に住宅を建てることが多く、家のまわりの採光や眺望は期待出来ないので、上方からの自然光や高い位置にあるバルコニーをうまく計画することが重要です。一般には「屋上バルコニー」のご要望が多いですが、屋上バルコニーの床は通常の屋根よりもコストがかかり、3階から屋上へのぼる階段も余分に必要です。また、屋上の手すり壁の立ち上りは高さ制限の対象になります。

 「西宮の家」は高さ制限の厳しい角地であったため、屋上ではなく2・3階のバルコニーを組み合わせてバルコニーの屋外空間を計画しました。冒頭写真上の3階バルコニーは主寝室の前にあり、はす向かいの公園の木々を眺められます。一方、リビングダイニング前にある三角形の小さな2階バルコニーは、3階バルコニーと吹抜けを通じて視覚的につながっているので、実際の大きさよりも広がりが感じられます。大きな屋上バルコニーよりも小さなバルコニーのつながりの方が豊かな屋外空間になるかもしれません。

→ 西宮の家

門扉は不要?

「西宮の家」の設計 ⑬

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第13回です。

 2023年は卯年ですが、「卯」の字は門扉が開いた形とされ、天門が開いて万物が繁茂することから五穀豊穣、家内安全を意味する縁起の良い文字だそうです。最近の住宅はコストダウンのためか、門扉や塀を簡略化したり省略することも多いようですが、門扉や塀を設ける理由としては以下が挙げられます。

1)防犯・防護
2)敷地境界を明確にする
3)建物と一体の外観デザイン

 敷地いっぱいに建物を建てた場合は建物まわりに土地がほとんど残らないので、門扉や塀をつくらない選択肢もありますが、冒頭写真の「西宮の家」では角地で車が追突する危険があることや、三角敷地の突端に塀で囲った小庭を計画すること、建物と塀を一体として大きく見せることなどが理由で門扉と塀を計画しました。門扉は玄関ドアと一緒に建物のエントランスを演出するので、既製品の門扉ではなく特注のアルミ門扉を塀上のアルミルーバーと共に製作しました。通常の門扉は玄関ドアへ至る前にありますが、「西宮の家」の玄関ドアは道路に直接面しているので、この門扉は通用門として機能しています。

→ 西宮の家

採光シミュレーション

「西宮の家」の設計 ⑫

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第12回です。

 住宅の居室は一定以上の採光をすることが建築基準法で定められていますが、生活をして快適であるためには法令規定以上の採光が一般に望ましいです。また、法令ではその部屋にある窓の合計面積しか評価されませんが、実際には個々の窓の配置も重要で、隣の部屋から光が入ることもあります。良い採光であるかは平面図や立面図だけで判断するのは難しく、BIM(3次元CAD)で敷地の経度・緯度を入力した3次元モデルに想定される太陽光を入れて検証するのが有効で確実な方法だと思います。

 冒頭写真の右側に並んでいる画像は、「西宮の家」の2階LDKに三角形の中庭を通して太陽の光が入るか設計段階で検証した夏至の日の10時から12時にかけての様子です。奥のキッチンは少し暗いですが、ダイニングテーブル廻りには光が差し込んで、12時には隣の階段室上部のトップライトから光が入ることが確認できました。

 道路をはさんで向かい側の集合住宅からの視線をさえぎるために三角形の中庭の外側にも壁を設置していますが、この検証の結果、中庭の上部や壁中央の開口から太陽高度の高い夏でも中庭とダイニングには陽が差して明るいことがわかりました。また、階段上のトップライトはコストダウンで削除が検討されていましたが、ダイニングにも有効に光が入ることがわかったため残すことになりました。

 周囲の建物による反射や天候などの影響もありますので、採光の状況を正確に再現することは難しいですが、BIMを使用しておおよその採光をシミュレーションすることは可能です。

→ 西宮の家

窓のメリット・デメリット

「西宮の家」の設計 ⑩

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第10回です。

 建築基準法では住宅の居室は採光・換気のために一定基準以上の窓が必要です。窓をどのくらいの大きさでどのように配置するかは重要な設計課題ですが、一般に窓のメリット・デメリットは以下となります。

 窓のメリット
 1)光を入れる
 2)空気を入れる
 3)外を見る/外へ出入りする
 4)インテリアや外観のアクセントとなる

 窓のデメリット
 1)熱の出入りが大きい
 2)雨風が侵入しやすい
 3)室内がのぞかれる
 4)ガラスが割れて壊れやすい

 木製の窓が多かった時代は、窓のデメリットの部分はあきらめて、メリットの部分をいかに生かすかが設計者の腕の見せ所でした。2000年頃までは、アルミサッシではデメリットの解消も十分ではなく見栄えも悪かったので、建築家が設計する住宅の窓は、窓を開けた時に屋外の戸袋に建具をすべて引き込んで、室内からは壁に大きな穴があいたように見える木製窓が典型例であったように思います。

 一般的な木製窓は経年でひずんで隙間風が入り、結露して動きも悪くなります。また、近年は地球温暖化や健康への関心から、室内の熱の70%以上が出入りする窓の性能が重視される傾向にあります。最近のアルミサッシは高性能でデザインも洗練されてきているので、特に高気密高断熱の仕様やZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)とする場合は上級アルミサッシが必須となっています。

 「西宮の家」は高気密高断熱でもZEHでもありませんでしたが、冒頭写真のリビングからはす向かいの公園の木々を望む横長窓は、既製品のアルミサッシを組み合わせて設計しました。木造住宅ですが、建物角に鉄骨柱を入れて、直角に折れ曲がる窓がなるべく連続して見えるようにしています。また、窓の上枠木口の厚みに収まるような小型ブラインドを設置して、ブラインドを下ろせば障子を通したような柔らかな光が入る気持ちの良い空間となっています。

→ 西宮の家

キッチンはオーダーメード?

「西宮の家」の設計 ⑨

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第9回です。

 住宅の設計でお施主様から「キッチンメーカーはどこがいいですか?」という質問をよく受けます。ハウスメーカーで設計をしていた時は、自社と提携開発しているメーカーをお勧めすることもありましたが、設計事務所では公平なアドバイスを差し上げられるので、お施主様のご要望を伺って一緒に検討させて頂きます。

 システムキッチンが日本で生まれたのは、1970年代の高度成長期後半、ちょうどマンションがたくさん建ち始めた頃です。今ではたくさんの国内メーカーがありますが、ステンレス加工が得意なメーカーや家具製作が上手なメーカー、自社開発の素材を使用するメーカー、便器や家電の大手で総合的によくまとまっているメーカーなど各メーカーそれぞれ特徴があります。

 1930年代からの歴史をもつ欧米のメーカーも日本に多く進出していて、主流はドイツメーカーです。つい最近まですべて輸入代理店の取り扱いでしたが、日本法人を設立しているメーカーも見受けられます。ドイツメーカーのシステムキッチンはデザインも価格も上級で、ちょうど日本車とドイツ車のような関係です。高額の案件やキッチンにご予算をかけられる場合は主要な選択肢となります。

 メーカーの選択方法としては、ショールームへ行って販売員の説明を伺って、実際に展示品を使ってみることをお勧めします。設計者としては、お施主様のご希望やご予算を伺って、建物との調和を見ながら、メーカーの絞り込みや決定のお手伝いをさせて頂きます。

 また、上記メーカーを採用しないで、設計事務所で詳細図を描いてキッチンを家具工事としてオーダーメード(特注製作)する方法もあります。冒頭写真の「西宮の家」のキッチンは、三角形の敷地端部にある台形平面の台所であったため、家具工事として特注製作しました。水栓金具やシンク、オーブン、レンジ、ワークトップの材質や吊戸棚の塗装色などお施主様のご要望に応じて一つ一つの部材や色を選んで、BIM(3D CAD)で組みあがった姿を様々な角度から検証しながら決定しました。

 オーダーメードのキッチンとすると、設計者の手間はかかりますが、総費用としてはメーカーの高価格帯キッチンよりは安く仕上がります。さらに「調理設備以外はただの箱で良い」という割り切りがあれば、低価格のキッチンとすることも可能です。お施主様のご要望や建物の条件に合わせて自由に設計できるのが家具工事でのオーダーメードキッチンのメリットですが、メーカーキッチンのようなシンクや収納の細やかな提案やメンテナンス保証が無いのがデメリットとなります。キッチンをオーダーメードとされるかはケースバイケースではないでしょうか?

→ 西宮の家

階段は木製?鉄製?オープン?

「西宮の家」の設計 ⑧

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第8回です。

 平屋以外の建物には必ず階段があります。限られた平面で階段の占める面積は少なくなく、また毎日利用するので大切なものですが、階段に予算をかけて重視されるお施主様とそうでないお施主様がいらっしゃいます。お施主様のご要望をよく伺って、階段を如何に適切な位置とあり方で計画するかは、設計者の能力次第です。

 木造住宅でよくある階段は、壁に囲まれて部屋からは見えない木製の箱階段(はこかいだん)と呼ばれるものですが、インテリアの一部として露出して見える木製または鉄製(鉄骨)のオープン階段も最近では多く見られます。コストは一般に木製よりも鉄製の方が高く、オープン階段の場合は各階の空間が仕切られること無くつながるので、ルームエアコンの空調効率が悪くなります。通常のルームエアコンではなく、常に家全体に冷暖房をかける全館空調という考え方もありますが、その場合は空調コストが高くなります。オープンな鉄骨階段の見え方を優先するのか、階段にはコストをかけずに木製の箱階段とするのか、プランと予算のバランスを考えて決定します。

 「西宮の家」は3階建てなので、1階~2階と2階~3階の二つの階段があります。両方とも木製階段あるいは鉄骨階段とするのが一般的ですが、コストと意匠を考慮して、1階から2階は木製階段、2階から3階は鉄骨階段としました。1階から3階まで同じ階段が続くのは退屈なので、2種類の階段としたという理由もあります。冒頭の写真は2階~3階の鉄骨階段です。鉄骨階段はリビング・ダイニングから見えますが、透明の大型ガラスで仕切っているので、空調の暖気・寒気が逃げることはありません。「オープン階段のような鉄骨の箱階段」です。階段はすべて詳細図を描いたオーダーメードとなっています。

→ 西宮の家

オーダーメードバスとする6つの理由

「西宮の家」の設計

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第7回です。

 浴室について明確なイメージをお持ちでない場合も、ハウスメーカーや工務店ではなく設計事務所にお声掛け頂くお施主様は、既製品のユニットバスではないオーダーメードバスを望まれます。理由としては以下があるようです。

 1.唯一無二のものが欲しい
 2.FRP(繊維強化プラスチック)が好きでは無い
 3.使いたい仕上材料(特定のタイル・石等)がある
 4.洗面所との間仕切りを大きなガラスにしたい
 5.置き型の浴槽を使いたい
 6.自由な浴室の形・大きさ・窓でつくりたい

 ユニットバスは完結した商品を置くだけなので、必要な空間を確保しておけば特別な設計図面は不要です。また、防水などのメーカー保証もありますので、意匠にこだわりが無ければ手軽で堅実な選択ですが、設計の自由度は少ないので、上記理由には対応できません。設計事務所は、浴室に限らず詳細図を描くオーダーメードを基本としていますので、出来る限りのご要望の実現を目指します。

 「西宮の家」の浴室は、お施主様の特別のご要望はありませんでしたが、三角形の敷地形状に沿った建物先端の台形平面に、なるべくコストを抑えて計画しました。具体的には、ユニットバスとオーダーメードバスの中間のつくり方で、浴槽から下は既製品のFRPハーフユニットバスを使用してコストを節約し、浴槽から上は二種類のタイルで壁を貼り分けて、台形平面に合わせた飾り棚があるオーダーメードの設計となっています(冒頭写真及びCG参照)。

→ 西宮の家

サニタリーの設計

「西宮の家」の設計 ⑥

住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第6回です。

トイレや洗面所などのサニタリー(Sanitary:衛生設備)を設計する際に、どのくらいのコストをかけるかはお施主様次第で、予算が厳しい場合は極力お金をかけないということが多いです。

冒頭写真は「西宮の家」の1階トイレと洗面所です。写真を見られて「高級」と言って頂くことが多いですが、双方とも三角敷地の不整形なひずみを受けて余った台形の小さな平面に簡単な造作や塗装を施しただけですので、大きなコストはかかっていません。

鏡や塗装は比較的安価な仕上げ方法で、間接照明とうまく組み合わせると高級感を演出することができます。なるべくコストをかけないで、でも少し手間をかけて、サニタリーであっても特別感や高級感が感じられればと思っております。

多目的な予備室

「西宮の家」の設計 ⑤

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第5回です。

 「西宮の家」の1階には多目的な予備室があります。お施主様の親御さんや友達が宿泊するために計画されました。限られた建物の大きさやご予算の中で、予備室を計画することはまれかもしれませんが、子ども部屋もお子様が独立すれば空き部屋となるので、主寝室以外の寝室はすべて「多目的な予備室」と考えられるのではないしょうか?

 「西宮の家」の予備室は三角形の敷地形状を反映した台形平面で、先端の細まった部分に木板を2枚造り付けて本棚と机にしています。独立したキャスター付きの引出しがあれば学習机にもなります。そばにミニキッチンもあるので簡単な自炊も出来ます。また、予備室の隣りにはトイレもあって、3階の主寝室脇のトイレと公私の使い分けが可能です。結果として、予備室の多目的な使用法としては以下が想定されます。

1)親戚や友人の宿泊室
2)親御さんの部屋(水廻りの分かれた二世帯住宅)
3)子ども部屋
4)趣味の部屋
5)ホームオフィス
6)病気にかかった時の隔離室
7)夫婦別室となった時の部屋
8)賃貸部屋

 将来の不確実性や転売の柔軟性を考えると、寝室の設備や配置を新築時に検討するにあたって、なるべく多目的な対応が出来る計画が望ましいと思います。

→ 西宮の家